氷見野良三日銀副総裁は2025年10月21日、GZEROサミットジャパンで「Prophets, Armed and Unarmed―知と力の相互作用」をテーマに講演し、金融システムの新たな現実に即した国際プルーデンス基準の刷新を訴えました。
講演では、
金融危機は国境を越えて波及する「グローバルな公共財」的性質を持つとし、知識(knowledge)と力(power)の両立が実効的な国際規制に不可欠と述べられました。とりわけ、バーゼルIII以降、銀行以外のノンバンク(NBFI)が世界の金融資産の約半分を占め、既存規制の枠外でリスクが拡大している点を指摘。
ステーブルコインが国際決済システムで銀行預金を部分的に代替しうる存在として浮上しており、これに対応する監督・流動性・資本規制の整備が急務としました。バーゼルIIIの最終改訂パッケージの実装遅延を例に、国際合意と国内執行の乖離を批判し、「合意・移植・実効化」の三段階を途切れさせない制度設計の重要性を強調しました。
氷見副総裁は提案として、
①国際基準の合意から国内実装までのギャップ縮小、
②NBFI・ステーブルコインを包含する新たな監督枠組みの構築、
③市場分断を防ぐための主要国間の協調強化を提示しました。
日本経済への示唆として、短期的には新規制導入に伴う資金調達コスト上昇が想定される一方、中長期的には金融安定性の向上が企業活動を下支えすると分析。企業・金融機関は決済・資金調達の構造変化を見据え、リスク管理・内部統制の高度化を急ぐ必要があると結論づけました。